手作り石けんをおすすめする理由

2018年1月

 石けん、と聞いて思い浮かべるのは、お風呂場のプラスチックケースに置かれた白く四角い身体洗い用の石けん、とりあえず泡が立って洗うことができるけれど、洗い上がりはちょっと肌から潤いが抜けカサカサした感じになる、というものではないでしょうか。私自身がそうでした。
 そんな印象があるために、洗顔には石けんでなく洗顔フォームを使わないと肌が荒れてしまう…と思い、体には石けん、洗顔には洗顔フォーム、という使い方をしていました。

 それが当たり前と思っていた中、前田京子さんの著書『お風呂の愉しみ オリーブ石けん、マルセイユ石けんを作る(前田(2001年)飛鳥新社)』に出会い、実際に作ってみることにしました。もともとオリーブオイルを化粧用に販売して大きくなった某社の製品を愛用していたこともあり、オリーブオイルを主にしたその石けんのレシピに、惹かれるものを感じたこともあります。
 1ヶ月の熟成期間を置いて、ようやく使えるようになった手作りの石けん。その泡立ちや肌触り、洗い心地はこれまで私が「石けんとはこういうもの」と思っていたものとは、まったく違っていました。細かく肌に吸い付くような粘性のある泡は、まるでクリームのように滑らか。洗い流したあとの肌は、ほどよく皮脂が落とされ、ほどよく潤いを残していて、本来の皮膚の持つサラサラ、すべすべとした触感を取り戻した感じがしました。

 しばらく手作りの石けんを使い続けているうちに、これまでの習慣でつけていた洗顔後の化粧水や乳液が、実は不要なものだと気づきました。手作り石けんは、古くなった角質や余分な皮脂を洗い流し、天然油脂由来のグリセリンで肌をほどよく保湿してくれます。だから洗ったあともカサカサすることがなく、化粧水や乳液で保湿成分を加えて肌の調子を整える必要が、なくなったのです。
 生物学者の福岡伸一さんはその著書『動的平衡』の中で、食品や化粧品に添加されて「肌のハリ、弾力を保つ、蘇る」と謳われるコラーゲンの摂取について、実際にはまったく無意味であることを科学的に説明しています(福岡(2009年)木楽舎、76頁)。その記述を読んで、私は衝撃を受けました。実際には何の効果もない添加物を製品に加え「付加価値」を与えて高く売る。それが、私たちが知らずのうちに消費している「美」の「幻想」なのです。

 天然油脂を素材に作った手作りの石けんには、そうした「幻想」は加えられていません。16~17世紀にかけて作られはじめ、人々の健康と衛生、とりわけ肌の美しさを守ってきた、天然油脂由来の石けんには、「歴史」の積み重ねによって保証された効能があります。それは余計なものを何も加えず、自分自身の皮膚のはたらきによって美肌を作るのを助ける、ということ。半年、一年と手作りの石けんを使いつづけることで、何もつけない素肌の健康が、取り戻されていくのを私は実感しました。
 お風呂で湯船につかり、石けんを泡立てて洗い流すひととき。それは種々の思い煩いや頭を悩ます幻想を脇に置き、ありのままの自分にもどってくつろぐひとときでもあります。それは手作りの石けんだからこそ味わえる、ぜいたくな時間です。

 一片の石けんから、そんな時間を手に入れてみませんか?

(文責:河野)