手作り石けんの世界

2018年1月

 ヘンリー・フォードが流れ作業のラインを発明して以来、規格化して大量生産された製品は我々の生活に溢れており、それが百年も続いたため、我々もそれに馴染み、人と同じこと、画一であることに安心感を感じてしまっています。ドライブの朝はマクドナルドで朝食を摂り、暗い夜道でコンビニの看板を見かけると、ついホッとしませんか? それは画一化された品質とサービス、休みのない24時間の営業を示しており、全国どこへ行っても同じアイコンです。
 手作り石けんの世界はそういった規格大量生産の世界とは全く異なるものです。それは家内制手工業であり、製品は規格化の視点から見ると呆れるほど均質でなく、製造できる量も少なく、しかも出来上がりは調製ごとに違います。ですが、この前時代的な石けんが洗浄力や使い心地、あるいは経済性で量産品に勝ることもあると言えば、信じてもらえるでしょうか。

 一例として、最近は古い旅館を買い取って新規に開業したホテルも少なくありませんが、そういった所は例外なく排水管から異臭がします。レストアの際に合成洗剤で清掃しているからで、ベンチメイド(手作り)の石けんならそんな臭いはしません。異臭の源であるタンパク質は微生物によって分解できるからです。合成洗剤は微生物を殺してしまいます。日々の清掃から食器洗い、浴用にベンチメイドの石けんを使うことで排水設備が浄化され、オーナーは余分なコストを掛けなくても良くなります。
 肌のお手入れもボディシャンプーやシャンプー、コンディショナー、洗顔石けんは意外と高く、さらに化粧水や洗顔フォームまで含めれば、実は男性でも洗浄剤にはかなりの金額を払っています。ベンチメイドの石けんなら一個で全てを賄えます。当舎の石けんの価格は量販品の倍ですが、それ以上の経済的効果があります。

 使うとメリットも少なくない手作り石けんですが、ご家庭で作るにはハードルもあります。調製の際に用いる強いアルカリはそれ自体危険物ですし、必要な量に比べ、取り揃える油や薬品が多すぎることも不経済です。作業には熟練が必要ですが、一年か半年に一回では熟練する機会もありません。経験不足から未熟な石けんを使うと肌に赤斑が生じたり荒れたりします。当舎では通常の二倍の時間を熟成期間に置き、製品テストをしてご提供しています。
 プロジェクトの存続には一定の需要が必要です。一定の需要は材料の確保を容易にし、製造を安定させ、より均質で高品質な石けん作りを継続することに役立ちます。需要が多ければ企業化のメドも立ちます。現時点では顧客も少なく、知る人ぞ知る当舎の石けんですが、趣旨をご理解いただき、使っていただける方を増やしていただければ幸いです。

(文責・堀内)